無口な彼の熾烈な想い
「花菜ちゃんは、インコの世話をしてくれたおじさん、いや・・・お兄さん?は好きかな?」

「ケントくん?」

「そう」

「好きだよ。イケメンだし優しいもん。花菜、王子様がいいの」

小さくても女性はやはりイケメンが好きなのか。

3次元でもイケメンは正義・・・?そうなのか・・・。

鈴は、うっかり乙女ゲームの世界の妄想に取り込まれそうになりながらも

「もしも、ケントくんが本当は゛女の子なんだよ゛て言ったら、花菜ちゃんはケントくんを嫌いになる?いらないって誰かと取り替える?」

鈴がそう質問した。

花菜はビックリしたように目を見開くと、みるみるうちに涙を浮かべ、大きく横に首を振った。

「ケントくんは女の子だったの?えー?・・・びっくりしたけど、ケントくんはケントくんだもん。嫌いになったり捨てたりなんてしない。でもケントくんはケントちゃんになるの?」

またも斜め上の誤解をしたようだが、さすがに身近な人間は見捨てないつもりらしい。

「ピーちゃんも花菜ちゃんがメスだと知らなかっただけで、仲良しさんのピーちゃんのままだよ?一緒にいて楽しくなかったの?」

「楽しかったよ。肩に乗ったりお話ししたり・・・。そう・・・だよね。ピーちゃんが女の子でも仲良しなのは変わらないよね。ケントちゃんもね」

鈴の言葉に納得したように大きく頷く花菜に、鈴が満足していると、

「俺は最初から男だ」

と、不服げに表情を歪めながら、

いつの間に院内に入ってきたのか、3次元イケメン瀬口が3次元美女の後方に鳥籠を持って立っていた。
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