無口な彼の熾烈な想い
河上家の3人と獣医の鈴が、来訪者の対応をしている間、絢斗はチョビビともう一匹の大型犬・ワンダのお世話をしていた。

二匹は体こそ大きいものの、とても大人しく、訪れた家族連れに恐る恐る触れられても決して怒ることはなかった。

12時になり、礼治が用意してくれたというサンドイッチを交代で食べながら休憩をとることになった。

「ところで鈴先生、今日はクリスマスイブだけど、ソウくんとはどこまで進んだ?」

総子の言葉に、サンドイッチを口に入れて正に飲み込もうしていた鈴と絢斗はすかさず反応する。

「ど、どこまでって、今答えるべきですか?」

チラチラと絢斗を見る鈴は明らかに焦っている。

生憎、当の惣太郎はトイレ休憩で離席している。

チョビビを撫でる礼治はニヤニヤしているし、はっきり言って絢斗は気分が悪い。

「ほら、前にクリスマスイベントがどうとか言ってたじゃない。男に興味がない鈴先生が珍しく好意を持った相手でしょう?どうなったか気になるわけよ。親(代り)としては」

なんと、鈴は相手の親に向かって惣太郎に好意を持っていると公言していたのだろうか?

千紘も綾香も、鈴には特別な人はいないと言っていたが、まさか年下の学生に興味を持っていたとは。

しかも惣太郎は18才らしいし未成年に手を出すとなると躊躇するのは無理もないのだろう。

昨日、鈴は確かに絢斗のことを好きだと言った。

身も心も受け入れてくれて想いは一つになったと信じてはいる。

だが、こうして真っ赤になって照れている鈴を見ていると不安が募る。

絢斗は無表情な顔に怒りと不安の混ざった複雑な表情を浮かべて固まっていたが、それでも鈴からは否定の言葉が出ると信じていた。
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