無口な彼の熾烈な想い
ひらのペットクリニック。

ここは鈴の兄夫婦が経営する小動物専門の病院だ。

消したばかりの室内灯のスイッチを再度入れ、鈴は診察台にイケメンの持ち込んだタオルを置くように促した。

「セキセイインコ・・・ですか?」

「ああ・・・」

「初診ですよね?」

「ネットで・・・」

この3次元イケメン、質問には最低限しか答えないほどの無口なようだ。

「触っても?」

3次元イケメンは表情も変えずに頷いた。

まあ、触らなければ診察はできないのだから断られても触るのだが。

「あんたでわかるのか?」

鈴はムッとした顔で、チラリと3次元イケメンを見やると

「他所に行きたければご自由に。行き着く頃にはこの子の命は保証できませんが」

と言った。

スクラブを脱いだ鈴は確かに獣医には見られない。

フワフワの白いセーターにジーンズ、ブラウンのストレートヘアを下ろした色白な容姿は、時に大学生に間違われるほどだ。

化粧っけもほとんどないのは、動物が匂いに敏感だから、という理由以外にない。

「いえ、お願い・・・します」

間を置かずに丁寧にお願いしてきたということは、鈴を獣医なのだろうかと測りかねていたからだろう。

鈴はクスリと笑うと、ぐったりとしたインコに向き合い、丁寧に体を診察し始めた。

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