無口な彼の熾烈な想い
「姉の子供が飼っているのをあずかっているだけで、詳しいことはわからない」

聞けば旅行に出た姉夫婦に代わり、セキセイインコをあずかって3日目らしい。

鈴は丁寧にセキセイインコの排卵を促しながらも、無口な3次元イケメンから何とか問診を取り、頭の中で状況をまとめた。

「それは何をしている・・・」

無口なだけではなく上から目線な物言いの3次元イケメンだな、と思いつつも鈴は端的に答える。

「卵を出しています。卵詰まりなだけに」

「綿棒で?」

「ええ。あいにく排泄口の近くで詰まってますから」

インコの排泄口は排泄と排卵を兼ねる。

だからこそ致命的になりうるのだ。

「へえ、物知りだな」

仮にも獣医に向かって何て言いぐさかと思ったが、今夜限りのお付き合いだろう、と思って言い返すのはやめた。

卵は三個出てきた。

ぐったりとしていたセキセイインコは、すぐに復活し、キョロキョロと周囲を見渡すと、目の前にあった鏡をツンツンとつつき始め、体を左右に揺すり始めた。
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