離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 目が合うと、男は「やっぱり冗談だった?」と悲しげな目つきを見せた。

 まっすぐこちらを見据えるその瞳は翳りもなく澄んでいて、嘘をついているようには思えなかった。

 真剣なの? ……わからない。しかし、乗らない手はなかった。

 もともとそのつもりでこの男に接近したのだ。この男がどんなつもりでもかまわない。私は私の目的を果たせればそれでいいのだから。

 一度うつむき、笑顔を作って高城へ向けた。

「私でよかったら、よろしくお願いします」

 私は予想とは大きく違う形で、復讐のスタートラインに立った。
< 39 / 204 >

この作品をシェア

pagetop