離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 高城にすれば私は、今日パーティーで会ったばかりの見知らぬ人間だ。それも酔いつぶれて迷惑をかけたばかりで、いったいなにがどうなったら結婚したいなんて結論に至ったのだろう。

 冗談でなければ意味がわからなくて、質問せずにはいられなかった。

「本気だよ。素直で可愛らしくて、たったひと晩そばにいただけだけど、君に惹かれている。まずは付き合ってくださいと言うべきなんだろうけど、君とならうまくやれる気がするんだ。だから君さえよければ本当に俺と結婚してくれないか」

 高城は、優しく目を細めて言う。

 この男、本気で私にプロポーズしてるの?

 今夜が始まりと考えていた私は、突然急激に進展していく物事に思考が追いつかなかった。

 ここまで順調にいくのはさすがにおかしい。まさか、私が藍野の娘だと気づいているんじゃ……。

 でも、それなら尚のこと自分に復讐しようとしている相手に結婚してほしいなんて言わないよね。それともほかになにか企みがある?

 私は探るような眼差しを高城へそそぐ。
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