離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 顔を上げて「はい」と笑顔で返したけれど、両親の墓前にこの男を連れて行くなど想像もしたくない。この男に父たちの話題を口にされるのすら腹立たしかった。

 私の父が、自分が無慈悲に切り捨てた藍野正太郎だと知ったら、この男はいったいどんな顔をするのだろう。

 先日、結婚をするにあたり互いの両親の話になったとき、私の両親はすでに亡くなっていて、ほかに身寄りもないと高城に伝えた。

 そもそも離婚するために結婚するのだから、最初から叔母たちには紹介するつもりはなかった。

 結婚して即離婚なんて事態になったらみんな絶対に心配するだろうから。

 叔母には旦那さんである叔父のほかに、私より五歳年下のひとり娘、千夏(ちか)ちゃんがいた。

 それでも叔母と叔父は姪っ子である私にもわが子同然に接し、当時十歳だった千夏ちゃんも私を姉のように慕ってくれて、叔母家族には多くの愛情をそそいでもらった。
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