離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「悠人さん……」

 懇願するように高城にすがる。反応がなくて不安になったけれど、しばらくすると強く抱きしめられて私はほっと胸を撫で下ろした。

「後悔するなよ。これ以上は止まれなくなる」

 高城の声がさらに低くなって鼓膜を打つ。本能むき出しの男の声に、私はこの男の本性を見た気分になった。

 再び押し倒され、覆いかぶさってきた高城の眼差しが私を捉える。艶やかに潤んだ瞳は熱に揺れていた。

 そのあまりの色っぽさに、背筋の辺りが甘だるく痺れる。そのあとも高城は、先ほどの言葉とは裏腹に優しく私に触れた。

 優しい夫のふりなどしないで、冷酷に、自分勝手に抱けばいいのに。私はあなたがその仮面の下に隠している冷酷な一面を知っているのだから。

 男の手に反応しながら、私はぶつけどころのない歯痒さを感じていた。

 必ず本性を暴いてやる。早く私を好きになって絶望を知ればいい。

 高城の背中にしがみつきながら、私は照明が消されたように心が色を失っていく感覚を覚えていた。
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