離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 まつりに経験がないのはなんとなくだがわかっていたし、少し方法は荒いかもしれないけれど、途中で彼女が怖がる仕草を見せればそこで止めるつもりだった。

 まつりが声を上げたとき、あのまま抱きしめて眠るはずだったんだけどな。

 彼女が心を決めた顔で言った『……お願いします。止めないで。私もあなたと夫婦になりたいんです』のひと言を、泣き出しそうな顔で懇願してきたのを思い返した。

「俺は、こんなにも君を苦しめていたんだな」

 彼女の思いを想像し、胸が強く締めつけられる。

 微塵も本心ではないとわかっていたのに。偽りの言葉とわかっていても、彼女に求められれば止められなかった。俺はずっと君を見ていたのだから。

「まつり。俺は君が好きだよ」

 復讐すると固い決意を持っていても、俺の言動、行動に素直に反応して、表情に出してしまう君が愛おしくてたまらない。寝ている顔もなにもかも可愛くて、今すぐ抱きしめて想いを伝えたかった。

 たとえ君が自分の身体を差し出すほど俺を憎んでいるのだとしても。
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