離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 でも、それはできない。俺はあの約束を守ったまま彼女を救わなければならないのだ。真実を知ればまつりは傷つく。これ以上彼女を苦しめたくない。

 まつりがどんな気持ちで俺に抱かれたのかと思うと、切なさで胸がいっぱいになった。

 やっと触れられたのにな。まつりには笑っていてほしい。しかし、そうなるまでにはきっと長い時間が必要だ。

 抱きしめて眠ったら、朝、目を覚ました君はどう思うかな。

 俺は、彼女の前髪にキスを落とす。

「おやすみ」

 どうか眠っている間だけは、彼女の心が安らかであればいいと願った。
< 70 / 204 >

この作品をシェア

pagetop