無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
壱への隠しごとは、ほとんどない。
今日も今日とて、壱の夢だ。
小さなそれはもう小さな壱が、小さな赤い色のお花を、小さな私に差しだしている。
なにもかもがまだ、小さな世界。
私の小さな手がその赤をそっと受けとった時の、壱の、雪解けのようにやわらかな笑顔。
あれは、何歳の頃のことだっただろう。
もう覚えていない。
だけどひとつけ、確かなこと。
これが、私のすべての記憶のはじまりだということ。
私が思い出すことのできる、一番古い、最初の記憶だということ。
この確かな事実を、私は宝物のように抱きしめて生きている。
壱への隠しごとは、ほとんどない。
だけどこれだけは秘密。
ずっと隠して、私は今日も壱の隣にいる。
壱からもらったあの小さな赤い花は、どこにいってしまったんだろう。
今、どこにあるんだろう。
ぼんやりそんなことを考えながら醒める夢に、18歳の壱は出てこなかった。