これを愛というのなら
社長からOKが出た次の日から、蓮は日に日に疲労が増しているように見えた。






「少し休んだら?」





「休んでられるか。今ある具材で作り直すこと、期限はあと3日なんだよ」





「でも少しは休まないと倒れちゃうよ。最近、日付が変わるまで残ってるみたいだし」






なんで知ってるって顔をして、私を見返す。





「忘れ物を取りに来た時にまだ、厨房の電気がついてた」





「見られてちゃ仕方ないか。ちゃんと休むから、あと3日だけ何も言わないでくれ」





瞳は真剣で料理人の瞳。




もう何も言えないじゃない。





わかった、と言えば満足したように微笑んだ。





「私の舌でいいなら味見するから言ってよ?」





「確かかよ?梓の舌」




「確かだよ、失礼ね。蓮の作る料理ばかり食べてるから、舌がこえちゃったし」






ハハハッと笑った顔は、久しぶりに見る蓮の笑顔。




やっぱり、蓮は笑ってた方がいいよ。




疲れた顔なんて似合わない。






「ありがとな。梓のおかげで何日かぶりに笑った。それと、これが一段落したら梓にだけ飯を作ってやるよ」




何を食いたいか考えとけ、って言った表情は見えなかったけれど。




どういうつもりで言ったの?




蓮が私を誘うなんて…はじめてじゃない。
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