これを愛というのなら
ーー期限の日。





蓮は私に、味見をさせた。




それは夏らしい涼やかな味だった。






「美味しい!これなら社長も納得するよ」





「当たり前だろ。誰が作ったと思ってんだ?」





「料理長様です」





と答えると、よろしい、と頭を撫でられた。






昼頃に来た社長のOK も出たらしく早速、 撮影。




どう撮れば、美味しそうに見えるかまで蓮に指示されて、何回も取り直した。






あとは、私の仕事。




蓮が試行錯誤して完成させた料理も、式場の社員スタッフ皆で考えたプランで、



一組でも多く、目を引くレイアウトにしよう。






蓮の料理を食べて、やる気も出て、




その日は気が付けば事務所には、私しか居なくて。




デスクの空いたスペースに、いつ置いたのか、




“程々にしとけよ。



鍵は忘れずにかけて、気を付けて帰れ。



お疲れ様。 ”





メモ紙に、そう書かれてあって。



その上にはカフェオレがあった。





カフェオレを一口飲むと、蓮がいつも私に作ってくれる味で、



わざわざチーフが蓮にお願いしたのかと思うと、笑みが溢れた。





明日は定休日。




カフェオレを飲みながら、仕上がった時には日付の変わる、1時間前だった。
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