これを愛というのなら
車に乗るまで蓮は強く手を握ったまま、一言も発することはなく。


「梓……商店街を俺は守れるよな?」


漸く、発した言葉は弱々しい声の、蓮の本音だった。



不謹慎だけど……

色んな不安を押し殺して、持ち前の頭の回転の早さで、

自分に出来る、自分にしか出来ない事を引き受けて、

強くあろうとしていた蓮が、1つの確証を得て、

ふと気が揺るんだ時に、弱音を私に吐いてくれたことが嬉しかった。



「守れるよ。蓮は一人で闘うんじゃないでしょ?商店街の皆がいるよ!」


「そうだよな。忘れてくれ、今の俺の言葉。もう弱音は吐かないから……守り切れた時まで」


わかった、と頷くと、バックミラー越しに微笑んだ蓮は、私を抱き寄せてキスを交わす。


信号が青に変わってから、

もう一度、言っとく。


「俺を信じて、守られてろ!」




わかってる。

蓮は大切なものを人を、守るためなら揺るがないこと。

その揺るがない蓮に、たくさんたくさん守られてきたこと。

守られてばかりだって、私も守りたいって思う。

だけど、それは蓮みたいな守り方じゃない。

決して強くない蓮の心の拠り所になる守り方。

蓮の言葉から伝わるのはきっと、そういうこと。

私も揺るがないよ。

蓮と一緒に、蓮とは違う守り方で大切なものを人を、守るよ。


言葉にしなくても、わかってくれてるよね。


バックミラー越しに見つめると、優しく微笑んで頷いてくれたから。


大丈夫だよ。


全ての私の想いを、この言葉に込めると自然と笑顔が溢れる。


梓の大丈夫と笑顔があれば、俺は無敵だな。
< 158 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop