これを愛というのなら
「やっぱり、裕司を味方するために妹を近づかせてた…」


今、私たちは小野鮮魚に来ていて瑠美さんが認めた事を伝える。

小野くんも、奈々枝さんも一瞬にして顔を歪ませて。

許せない。許さない。


「さてと……どうするかな……まず裕司に話してきてくれ。裕司は、曲がった事が嫌いな奴だからわかってくれる。それから、一番やり易い方法は署名を集めることだ」


「そうだな」


「それと、賢ちゃんにはとりあえず連絡入れといた、困ったら連絡してって言ってた」


「ありがとうな。今から裕司んとこに行って話してくる」


「わかった。それから近いうちに、はせがわに皆を集めて話をしよう」


「言っとくよ。説明は任せていいか?」


「任せろ。お前より得意だから」




ーーーーー。


松田くんに、妹さんの事を話すと。


「商店街の件は親父から聞いた…でも…それに…友恵ちゃんが関わってた…?騙されてたってことか?」


「騙していたのかは…わからないけど、商店街を売却させる目的で妹が裕司に近づいたのは事実だ」


項垂れて、頭を抱えた松田くんに、大丈夫か?と蓮が背中に手を添える。


「…俺はさ……けっこう本気だったんだ。次に会った時に、ちゃんと告白しようって思ってたんだ……」


「だったら……お前の口から確かめて気持ちを伝えて、妹がお前を好きだって言うなら逆にこっち側の味方に引き込め」


「……そんな……蓮みたいにできるかよ……」


「出来ないじゃなくて……やるんだよ!裕司にしか出来ない!」


蓮の言う通りだ。

この役目は、松田くん以外には出来ない。

認めたくないのはわかる。

でも、紛れもない事実。

松田くんの気持ちを考えると、苦しくて切なくなる。

だからね………


「松田くん…?この前、ご飯をウチに食べに来てくれた時に、松田くんといる妹さんを見ててね。少なからず松田くんを好きなんじゃないかって思ったの」


そうだよ、あの笑顔は作り笑顔なんかじゃない。

本当に、心から楽しそうに笑っていた。

妹さんの本物の笑顔だよ。


「……梓ちゃん……ありがとう」


私が感じたことを言葉にすると、立ち上がった松田くんは口角を上げて笑ったと思ったら突然、大声で笑いだして。

なんだよ?と蓮に突っ込まれて、、、


「わかったよ!蓮みたいに出来るかわからねぇけど……梓ちゃんの見た友恵ちゃんを信じてやってみるよ!」


そして、蓮の背中を叩いて。

俺も一緒に商店街を守らせてくれ、と。


「当たり前だろ!裕司と大輔が一緒なら心強い!」


「よしっ!商店街の悪ガキって言われてた俺らでまた、ひと暴れしようぜっ!」


そうだな、とお腹を抱えて笑う蓮を見て私も笑顔になる。

松田くんも、お腹を抱えて笑っている。




惑わされやすいけれど、曲がったことが嫌いで真っ直ぐで男気溢れる松田くん。

常に冷静で、客観的に物事を捉えて、的確に解決策を導き出せる頭脳派の小野くん。

誰にでも優しくて、正義感と責任感が強くて、持ち前の頭の回転力で、人を惹き付ける事の出来る蓮。


バランスが取れていて、この商店街の悪ガキ3人なら守れるような気がしてくる。

いや、絶対に守ってくれる。
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