これを愛というのなら
後日、大々的に“KOBAYASHI”のニュースが報じられた。


『ネットニュースで見たんだけど瑠美と旦那さんが逮捕されたって、お前も見たか?』


浅尾チーフからの電話を、蓮にテラスのベンチで腰を抱かれて聞いている。


「見たも何も……俺も梓も連行された、その場に居たからな」


どういうことだ?!


驚くのは当たり前だけど、蓮は一部始終をチーフに説明すると。


『……俺の知ってる瑠美じゃないな……』


「俺もだよ。アイツは変わっちまった……何が狂わせたのかはわからない…だけどまた、やり直せると信じたい」


許さない、許せないと言いながらも留学中に情を交わした相手だからこそ、そんな風に思える蓮は本当に優しい温かい人だと思う。


「そうだな……俺もそう思う。近いうちに利香と行くよ。倉本にも言っといてくれ」


そう思う、と返答したチーフも優しい温かい人。


「楽しみに待ってるよ」


ーーーー。

蓮の傷も癒えた頃、チーフと利香が訪ねて来てくれた。


久しぶりの再会にハグをして、はしゃぐ私たちを優しい瞳で、二人は見つめてくれていて、結婚式の招待状を渡してくれた。


「私たちってさ……色々とわかってるから披露宴はしないんだけど、親しい人と身内だけ呼んで私の実家の神社で式だけしたくて来てくれる?」


「もちろんだよ!ねぇ、蓮?」


「あぁ!招待状ありがとな」


よかった、とチーフと顔を見合わせて微笑む利香。


お前らはしないのか?


「面倒くさいんだよ。店もあるし、色々と準備がな」


「うん。蓮とは話したことあるんだけどね……それにフェアの代役で一通り着せてもらったし」


そうよね、と頷きながら。

久保さんが撮ってくれた、あの日の写真を飾ってある本棚を見たチーフも。

あの写真もあるしな。


そのあとはーーー。

蓮と二人で作った、ご飯とお酒を囲みながら。

リュミエールとマリッジの近況を話してくれた。


真壁さんが料理長になって、坂口くんが副料理長になったこと。

谷口くんと鈴木が付き合いだしたこと。

新しく改築が始まること。

利香が、改築の際に新しく併設される衣装サロンのチーフになること。


そして、、、


「相変わらずよね。くっつき過ぎ!」


「そうだぞ。365日、朝から晩まで一緒に居て…くっついてられるよな」


だって………くっつきたいんだもん。

ずっと触れていたいんだもん。

結婚してもなお、惚れ直したし好きになってくんだもん。


蓮も同じなんだろう。

この私の気持ちを全てを上手く纏めて、伝えてくれたけれど。


「子供が出来ても、梓たちはそんな感じなんだろうね」


「うん!当たり前じゃない!」


はいはい、ごちそうさま。

チーフと利香は、瞳を合わせて笑う。


「まぁ、相変わらず楽しそうで。二人が幸せそうで安心したよ」


そうだね、と利香は、チーフの肩に頭をのせて、負けてられないよ、と。


いつか、子供が出来ても。

子供も交えて会いたいね。
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