これを愛というのなら
「カフェオレ飲みたい」




「仕方ねぇな、いつものでいいんだろ?」





もう話す気力もなくコクりと頷いて、作業台に頭を乗せる。




冷たさが何とも言えないくらい心地好い。




出来るならこのまま、一日中ここに居たい。







「ほらよ、温かいうちに飲めよ」





「ありがと」





白い湯気のたつミルクたっぷりのカフェオレに口をつけると、身体がほんのり少しずつ、温まってくる。






半分くらいまで飲んでマグカップを置くと、





「月のものか?」





掠れた低い声が頭上に落ちてきた。




うん、と答える私の腰を温かい手が擦ってくれる。





「相変わらずだな。男の俺にはわかってやれない痛みだが、擦れば少しは和らぐか?」





少しどころじゃなく、和らぐよ。





この男、長谷川 蓮の手が好きだから。




いつも温かくて、指は長くて細くて大きくて、綺麗な手をしている。





料理人の手が綺麗って聞いたことがある。



はじめて蓮の手を見た時に、本当だ、と納得した。







「だいぶ和らいだよ、ありがと。そろそろ戻るね」





「そうか。カップは置いとけ」





「重ね重ねありがと」





おう、と煙草を咥えながら頭を撫でて。




「無理すんなよ」





口角を上げて微笑んだ。







優し過ぎるんだよ、この男。


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