これを愛というのなら
仕事終わってから、最寄り駅近くの馴染みの居酒屋ーーー。


職場の歓送迎会や、新年会の類いは大抵、この居酒屋で。

利香と私もよく、ここを利用している。




「気持ちさ、伝えるの怖いんだよね…」


レモンサワー片手に、そう言った私に。


「怖いって…気持ちがわからない!」


って。


だってさ…蓮と私は気が合って、何でも話せる関係なんだよ。


気持ちを伝えて、蓮の答え次第では今の関係が崩れちゃうかもしれないでしょ。


「要は、料理長を失うのが怖いってことね!」



そう!と、私の気持ちを聞いてくれた利香に頷く。



「う~ん…私はね、料理長も梓と同じ気持ちなんじゃないかな…って思うんだよね」


「だって、朝も言ったけど…料理長は、梓には本当に優しい顔するんだよ。私たちには見せない優しい顔」


私には、蓮が自分の前だけそんな顔をしてるなんてわからない。


でも、周りから見たらそうなんだろう。


「利香、今のままじゃダメかな?」


やっぱり怖いよ。


「別に、今のままでもいいと思うけど…そういう気持ちって、男はなかなか言わないよね…」


たしかに、特に蓮みたいな不器用なタイプはね…、と相槌をうつ。


「でしょ?でもさ、梓が今のままでもいいって思ってるなら、いいんじゃない。しばらく、料理長が気持ちを言ってくれるかもしれないし…待ってみたら?」


わかった、そうする。と答えると、


カウンターの隣に座る利香は、


何かあったら私がついてる!と肩をポンっと叩いてくれた。


ありがとう、利香。




そのあとは、今日の朝の坂口くんの件や利香の同棲中の彼氏の愚痴で、盛り上がっていた。


尽きない話に、気がつくと22時を回っていて……

さすがに明日、しんどい三十路女2人は家路に着くことになった。
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