これを愛というのなら
「いいんじゃねぇ。料理んとこなんてバッチリだ!お疲れさん」


蓮は、笑顔で私の頭をポンポンって撫でてくれた。


ありがと、と言うと。


いや、こっちこそありがう、と。


えっ?私、蓮にお礼を言われるようなことしてないよ?



だから、ん?と首をかしげると、


「料理んとこ、上手く作ってくれて」


と、微笑んだ。


そんなの当たり前じゃない!

蓮が休む間も惜しんで作った料理だよ。

たくさんの人に美味しいって言ってほしいもん。

そのためには、まずは見た目も美味しそうって思ってもらえるように
作らなきゃね。


なんて、言葉は今は心に閉まって。


うん、と笑顔で返した。



「とりあえずは、社長に目を通してもらってから、OKが出たらサロンに並べるよ!」


あぁ。と頷いた蓮に、


「あんまり、怒らないようにね。本当にいつか、パワハラで訴えられるよ」


と、冗談ぽく言うと、うるせぇ、と答えながらも笑顔だ。



「それじゃ、戻るね!頑張って!」


蓮の腕をポンっと叩いて、厨房を出たとき。



私を追いかけてきたんだろう、さっき怒鳴られてた厨房の新人。

坂口くんに声をかけられた。



「倉本さん!」



振り返ると、さっきはありがとうございました、と。


お礼を言われるようなこと、してないけど?


そう、答えると。


「いいえ。倉本さんのおかげで料理長に、あれ以上怒鳴られずに済みました」


苦笑いをしながら、坂口くんは頭をかいた。


ふふっ、と思わず笑ってしまった。


「なら、よかった。蓮はね…不器用だから、あんな怒り方しか出来ないけど。ちゃんと厨房のみんなのことを見ててくれてるから、良い所も悪い所もね」


だから、めげないで頑張って、と伝える。


素直な坂口くんは、はいっ!と元気に答えて、私に頭を下げた
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