これを愛というのなら
「梓!」


すぐ側で、大好きな声がする。


何とか掠れた小さな声で、


「…蓮…苦しい…」


と、絞り出した。



「喋らなくていい」


そう言ってくれた蓮は、私の背中を呼吸に合わせて擦ってくれている。


苦しいけれど……安心する。



「……蓮……水……飲みたい……」


やっとの思いで、絞り出した消え入るような声の要求も、

蓮はしっかり聞き取ってくれて。


「陽介!その水…もらっていいか?」


と、チーフが持っていたペットボトルの水を、チーフに頼んだのを。

デスクに頭を載せたまま、見ていた。



「梓…ちょっと動けるか?」


頷いた私の身体を優しく起こしてくれた蓮は、そのまま身体を支えてくれている。


「開けますよ?」


利香が、ペットボトルを蓮から貰うと蓋を開けて。

蓮に渡して。


その水を蓮は、自分の口に含んで、私に飲ませてくれる。


たぶん、今はただただ苦しくて。

蓮を突き放すことさえ出来ないけれど、プランナーや事務員さんが数人居る前で、こんなことされたら。

こんな状態でなければ、間違いなく突き放してる。




わっ!と何人かが、声を上げたのがわかった。





その直後に、到着した救急車に乗せられ。

蓮に付き添われて、病院に運ばれた。



病院に着くまで、ずっと蓮は私の手を握ってくれていた。
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