時空とか次元如きが私とレイきゅんの邪魔をしようなど……笑止!!
 私は十六歳になった。


 今、学園に通っている。この学園はレイきゅんや聖女であるヒロインたちが通った学園である。
 私はそれを知った時、それはもう興奮した。




 レイきゅんに会いに行くという目標はまだ叶えられていない。何故なら二百年前の世界に戻るのは容易ではないからだ。しかもレイきゅんに会いに行った時に年の差があるのでは意味がない。そんなわけで私が考えているのはレイきゅんと同じ年代に逆行転生するか、レイきゅんと同じぐらいの子供に身体を変えてしまおうという計画である。
 レイきゅんを幸せにしたい気持ちは心の底から本心なのだけど、私は我儘なので、出来れば私の手でレイきゅんを幸せにしたい。レイきゅんを幸せにして、レイきゅんに好きだよと言われて、レイきゅんと手を繋いで――ってそれを考えただけでも私は興奮してならない。
 レイきゅんレイきゅん、レイきゅん!!





「フェルチア様……今日も素敵ですわ」
「商家の出ですのに、動作が洗練されておりますものね。それに魔法の腕も素晴らしくて……」
「貴族令嬢ではなかったとしてもあの方でしたら、誰かと付き合っても許しますわ」





 ちなみに友達らしい友達は作っていない。いや、いないわけじゃないんだよ? でも何でか、この学園の生徒たち、私のこと遠巻きに見ていることが多いんだよね。何話しているんだろう? 私ってば何かしちゃったかな?



 心当たりはありすぎる。
 この学園で一番身分が高い王子と公爵令嬢の痴話喧嘩に口をはさんでしまったり、魔法の大会で一位になったりとか、色々したからね!! まぁ、でも商家の娘でありながら貴族様にいじめられたりしないのは良い事だと思っている。


 それにしてもレイきゅんに会うための目途がまだたたないのよね。レイきゅんの文献を読み漁ったりして、レイきゅんがどんなふうにいきていたかは分かってきた。ゲームの世界では分からなかったレイきゅんの情報を集められることは嬉しい。……ああ、でもやっぱりレイきゅんは本当に心の底から悲しい日々を送っていたのだ。そのことが分かったからこそ、私はレイきゅんにどうしても会いにいかなければならないと思った。






「フェルチア!! 俺と出かけないか!!」
「ごきげんよう。チアーク様。申し訳ございません。私はやることがありますの」





 ちなみに魔法が得意な公爵子息によく話しかけられるけれど、私はレイきゅんに会わなければならないのだ。
 そのために立ち止まっている暇などない!!
 私は前世からレイきゅんという存在に囚われているのだ。




 というか他の人に興味なんて持てない。私の理想で、私が愛しているのは前世からレイきゅんだけだから!!



 そんなわけで私は魔法学園を首席で卒業すると、実家の商家を盛り上げるために動いた。
 その中でお父さんとお母さんたちから縁談を持ってこらえることもあったが、私はレイきゅん以外と付き合う気も結婚するつもりもなかった。




「恋に生きるといっていなかったか? 結婚しないのか?」
「私は大好きな人がいるからその人に会うまで結婚しないわ」
「……そんなことを言って、もう二十五歳だろう? 魔法の研究しかしていなくないか?」
「大好きな人に会うために魔法の研究をしているの!!」
「???」



 お父さんは私の言葉に理解出来ないと言った様子だった。しかし誰に理解されなかったとしてもいいのだ。私はレイきゅんに会いに行く。レイきゅんに会って、レイきゅんを私が幸せにする。


 時空の差があろうとも、私はレイきゅんに会いにいくのだ!



 そんな気持ちのまま私は魔法の研究に没頭した。しかしやはり時空を超える魔法というのは難しかった。いや、座標を指定しないで行えるのならばなんとか出来そうだった。しかしレイきゅんがいる時代に私は生まれる必要がある。そうじゃなければ意味がない。





 レイきゅんに会うためにまずはレイきゅんにかかわりがある場所を巡った。そしてッレイきゅんの遺物だというものを集めた。
 こういうレイきゅんの魔力が少なからず残ったものがあれば、私はレイきゅんのいる時代へと飛びやすいから。
 それにしてもレイきゅんの遺物だと思うと、それだけでも愛おしい。ああ、レイきゅん、レイきゅん、私はレイきゅんに会いに行くからね。絶対に絶対に会いに行くからね。そしてレイきゅんが不幸になる未来なんて私は許せない!!





「よっしゃああ!! やっと、レイきゅんの所にいけるうううう」




 そして私がレイきゅんの所に行ける目途が経ったのは、私がフェルチア・ハスンとして転生して五十年も経ってからだった。

 もう私も大分年を取ってしまった。もちろん、レイきゅんの所に行く時は身体を小さくすることにした。私は子供の姿に戻るのだ。そして子供のレイきゅんに会うのだ!!



 そんな決意をして私は魔法を行使した。

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