奥手な二人の両片思い
学校に着き、夏穂ちゃんと塩野くんにもアメを渡した。



「ありがとう綿原さん」

「ありがとう! うちもチョコ持ってきたの!」

「ありがとう!」



夏穂ちゃんが渡してきたのはチョコクッキー。

美味しそう。家でゆっくり食べようっと!

クッキーが潰れないよう、そっとバッグに入れる。



「あのさ……これ、もしかして上川くんにも渡した?」

「えっ? うん……」



アメを持った塩野くんに尋ねられた。

答えると、目を丸くして絶句。



「ど……どうしたの?」

「……これ、書いてあるのは気がつかなかった?」



彼が見せてきたアメをよく見ると……細い字で【I Love You】と書かれていた。



「マジで? わ! うちのにも書いてある!」

「う、嘘……」



待って待って⁉ 字なんて書いてあった⁉ 私の見落とし⁉



「ごめん菫ちゃん……うちには弘貴がいるから……」

「俺も。夏穂がいるから……ごめんね」

「や、やめてよ! そういう意味で渡したわけじゃないって……!」



結局ツッコまれ、おまけにフラレてしまった。

ちゃんと確認すれば良かった。

だけど、幸いなことにアメの意味については何も言われずに済んだ。


上川くんは大丈夫かな?

たとえ文字に気づいたとしても、アメの意味までは知らないはず。だよね……?
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