奥手な二人の両片思い
金曜日の朝。



「おはよう綿原さん!」

「お……おはよう」



いつものように上川くんと駅で待ち合わせし、一緒に中へ。

バレンタイン当日は学校が休みだったため、一足先に今日渡すことに。



「あの……これ、バレンタインのお菓子です」

「わぁ、ありがとう! 嬉しい!」



空いていたベンチに座り、ラッピングしたアメを渡した。

良かった。喜んでもらえた。



「これは……アメ? 美味しそう」

「うん……チョコだとかぶるかなって思って。それに可愛かったから」



返答しながら様子をうかがう。

うっ……そんなまんべんなく見ないで……。



「バレンタインでアメもらったの初めてだよ! 帰ってからゆっくり味わうね!」



えっ、初めてだったの⁉ 私はなんて大胆なことを……!



「綿原さん大丈夫? 顔赤いよ?」

「だ、大丈夫……ちょっと重ね着しすぎちゃったかな⁉」



「暑いなぁ」と言いながらパタパタと顔を手であおぎ、マフラーを緩めた。

本当は寒いけど、照れてるのバレちゃうから我慢……。



「綿原さん……無理しなくていいんだよ?」

「へ⁉」



苦笑いしながら私のマフラーを元に戻す上川くん。

余計恥ずかしくなって、学校に着くまで彼の顔を直視できなかった。
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