奥手な二人の両片思い
翌日の昼休み。



「アッハッハッハッハッハッ!」

「ちょっと! 笑いすぎだよ!」

「だって……化け物って……」

「フフフ……」

「もう! 塩野くんまで!」



昨夜のゾンビメイクと両親の話を夏穂ちゃんと塩野くんに話したら、大笑いされてしまった。

まぁ、あのままご飯食べに行った私もどうかしてたけど……。



「そんなに笑わなくてもいいじゃん!」

「ごめんごめん! でさ、写真撮ったんだよね?」

「うん。ゾンビメイクする前のだけど……」

「ちょっと見せて?」

「やだ! また笑うでしょ⁉」

「なに? 笑っちゃうくらい濃くなっちゃったの?」

「夏穂……それくらいにしとけって……」



ツボに入った2人。まだ肩を震わせている。

見せて感想聞こうかと思ってたけど……やーめた!



「もう! そろそろやめてよ!」

「ごめん! この話も上川にしてないの?」

「当たり前だよ! 仮装すること言ってないんだもん! っていうか、ゾンビになるなんて恥ずかしくて言えないよ!」



夏穂ちゃんに言い放ち、少し熱くなった両頬を手で押さえる。



「上川くんなら『アートだ……!』って感動しそうだけどな」

「……そう思ってくれたらいいけどなぁ」



言ったところで、バカにしてはこないと思うけど……やっぱり言えない。

だって、あっちは医者でこっちはゾンビ。人間の仮装じゃないんだもん。
< 57 / 144 >

この作品をシェア

pagetop