奥手な二人の両片思い
「……何これ」

「この前整理した時に見つけて。菫に合うかなって」

「ちょっと! 私の部屋を本棚にする気⁉」



紙袋の中には、『漫画でわかる! 色の使い方』と書かれた本が入っていた。
しかも未開封の。



「うっ……でも、これを読めばオシャレになって化粧も上手くなると思うぞ!」



け、化粧って……まさか、この前化け物って叫んだゾンビメイクのこと⁉



「もうあんな化け物にならなくて済むとおも……」

「わかった! 読めばいいんでしょ! 読めば!」



声を荒らげ、ドアをバンと閉めた。

もらった本を見ると、帯には『これであなたもカラーマスター!』と書いてある。

読まず嫌いはあれだし……1回読んでみるか。


翌朝。



「その本、新しく買ったの?」

「お父さんにもらったの。色の効果とか心理が書いてあるよ」

「へぇ、面白そう」



上川くんに説明しながら電車を待つ。

あまり色に興味はなかったけど、1度読んでみたら意外と面白くて、昨夜で一気に半分まで読み進めた。

お父さん、意外とセンスあったんだな。



「貸そうか? 上川くんオシャレ好きだから、コーデの参考になると思う!」

「いいの⁉ じゃあテスト終わってから借りてもいい?」

「うん!」

「ありがとう!」



学校に着いてからも、授業が始まるまでも、夢中になって読んでいた。

あ、この本もしかしたら……。
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