奥手な二人の両片思い
怜也side



「それで、もうその先輩達に絡まれることはなくなったの」



話し終えると、綿原さんは少し俯いてスカートを握りしめた。

当時の恐怖が甦り、体が少し震えている。



「ずっと黙っててごめんね」

「いや……全然……」



ごめんねなんて、むしろ謝るのは俺のほうだ。


校舎裏で泣いていた時からずっと、もう悲しい顔にさせたくないって。

ナンパ男を追い払った時も、怖い思いはさせたくないって。

そう決めたのに。


俺は……大好きな人が苦しんでいたことに気づけなかった。

これじゃ何のために傍にいるんだよ……!


自分を責めていると、隣で鼻をすする音が聞こえた。



「大丈夫⁉」

「ごめん、ちょっと思い出して……」

「いや、俺のほうこそ。気づけなくてごめんね。もう無理しなくていいから」



泣いている彼女の背中を擦る。


あぁ……どうしてこういう時に限ってハンカチを持ってきてないんだよ……。

目の前で好きな子が泣いてるのに。
せめてティッシュぐらい持ってこいよ俺……。



「ううん。もう終わったことだし、聞いてくれてありが……」
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