奥手な二人の両片思い
「むしろ俺のほうが部屋散らかってるし。クローゼットの中なんて、もはやジャングルだよ」

「へぇ~。黒瀬くんのほうがだらしなかったとは……人って見かけによらないね~」



何よりショックなのは、綿原さんも勘違いしていたということ。



「綿原さん……俺、意外と几帳面なとこあるんだよ……?」

「あわわ……ごめんね上川くん!」



慌てて謝る彼女と軽く落ち込む俺を見て、隼達は爆笑したのだった。






「じゃあまたなー」

「「バイバ~イ!」」



夕方5時過ぎ。外が暗くなってきたのもあり、一足先においとますることに。



「今日は色々あって楽しかったね~」

「そうだね。あ、さっき動画撮ってたよね? 見せて?」

「いいよ~」



撮った動画を見せてもらった。

……ダメだ、これは笑いを抑えきれない。



「その動画……清花ちゃん達に送るの?」

「うーん、あの2人が付き合ったら送ろうかな」

「やっぱり綿原さんもそう思う? あの2人、絶対両思いだよね」



自分のことを棚に上げて、「早くくっついてくれないかな」と口にした。


隼も清花ちゃんも、俺が綿原さんを好きだと知っている。

2人だって「早く告れよ」って思ってるかもしれない。


でも、告白して関係が気まずくなったら……怖くて言い出せない。


臆病な自分に腹が立つ。

このまま気持ちを伝えずに、もし綿原さんが誰かに取られたら、絶対後悔するのは目に見えているのに。
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