例えば世界が逆さまになっても




春が来て、俺は第一希望の大学に進学した。
そこは、彼女の志望大学でもあった。

彼女が成瀬の遅すぎた初恋相手だと知ったときは、予想外のことに狼狽えてしまったが、俺が狼狽えたところで何か変化があるはずもなく、ただ、無意識のうちに成瀬とは近付かないように振る舞っていた。
成瀬の方は、なぜだか俺との距離を縮めたがってる雰囲気があったものの、間違っても、彼女と進展があっただなんて聞きたくなかった俺は、ただの同級生という位置づけを変えることはしなかった。

成瀬は京都の大学しか受けないと本人から聞いて知っていたので、卒業後、彼女や俺と接点ができるとは思っていなかった。
もちろん、学校外での成瀬の行動を把握してるわけはなく、成瀬と彼女の間に何かが起こっていた可能性は否定できない。
だがもしそうなら、あの成瀬のことだ、きっと、俺にその報告をしてくるだろう。
そんなことになっていないのだから、俺は、少なくとも高校卒業の時点では、成瀬は彼女と何もないに違いないと思っていた。……正しくは、そう思い込もうとしていた。


そしてその推測が正しかったことは、大学入学後、再会を果たした彼女自身によって教えられることとなったのだった。









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