地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので……

水の宮殿(AQUA PALACE)


「ひろき。どうしたの」




客間からやって来たひろき君は、毛布を引きずってもじもじして冬野さんの元へやって来ると、寝ぼけ眼で冬野さんを見上げて驚愕の事実を告げた。




「おねしょしちゃった」




おおう。

よく見るとズボンが濡れてますね。



私は立ち上がり、ひろき君の傍に行った。




「お姉ちゃんとお風呂に行こう」

「え、石ちゃん」

「ズボン、気持ち悪いでしょ。お姉ちゃんと行こう。冬野さん、お風呂どっち」



私は有無を言わせず、ひろき君の肩を抱いて、冬野さんにお風呂の場所を教えて貰ってバスルームへ向かった。

濡れた毛布を受け取り、濡れた服を脱いで受け取り、バスルームのシャワーのお湯を調節した。



「ひろき君。一人でシャワー浴びれる?」

「うん。大丈夫」

「じゃぁ、身体洗って、良くあったまって、着替え用意するから」



私は、後からついて来た冬野さんに、ひろき君の着替えがないか?尋ねて、ひろき君が持っていた荷物に着替えがあると聞いて、脱衣所にセットした。



「冬野さん、ひろき君の寝てたところ、シーツ大丈夫でした?」

「あ、まだ確認してない」

「でしたら、私が見て来ますから、ひろき君見ててください」

「手際良いね、石ちゃん」

「妹達で慣れてますから」

「え、達って……」



不思議そうにする冬野さんを置いて私は、ひろき君の寝ていた客間へ向かった。

4つ離れた妹や、もっと歳の離れた従弟の世話をした経験上、こんな事は朝飯前だ。

客間は簡易ベッドの置いてある殺風景な部屋で、乱れた枕と皺の寄ったシーツには丸い染みが見えたので、外すと幸い濡れているのはシーツだけだったので、それだけ回収して脱衣所に戻るとひろき君はバスタオルで体を拭いていて、濡れた髪を冬野さんにドライヤーで乾かして貰っていた。



「洗濯する前に、お風呂ですすいで良いですか?」

「ごめん、お願い。後は洗濯機でやるから」



私はバスルームでひろきくんの濡れた服とシーツをあらかたシャワーのお湯ですすぎ洗いして、簡単に手で絞って、冬野さんに手渡し、冬野さんはそれを洗濯機にかけた。



「ごめんなさい」

「大丈夫。まだ小学一年生なんだから。さっきホットミルク飲み損ねちゃったね。喉乾いてない」



冬野さんとひろき君とリビングに戻り、冬野さんはホットミルクを作ろうと冷蔵庫を開けた。



「あ、牛乳、ないや。ごめん、ひろき。あったかいお茶じゃだめかな」

「……いや」



ひろき君はそう言って口を尖らせた。

冬野さんは、困った顔で私を見た。



「石ちゃん、ごめん。ちょっとコンビニ行ってくる間、ひろきを見ててくれないかな?」

「私が買って」「留守番を、お願い」



私が口を尖らせると、ひろき君は目を丸くして私に言った。



「喧嘩しないで」

「「してない」」



私と冬野さんは声を合わせて否定した。



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