地味で根暗で残念ですが、直視できないくらいイケメンで高スペックな憧れの先輩に溺愛されそうなので……

LAST WEEKに未練は禁物

月曜日、マキさんは金曜日の午後の便で日本に帰ってくると人づてに聞いている。

まさに鬼の居ぬ間の洗濯である。




彼女が日本に帰ってきたら、さざ波の様に綺麗に去ろう。

そして一生関わるまい。



傷は浅い方が良い。



面倒なことは極力、逃げる、避ける、関わらぬ。



それがモットー。




今までも、そしてこれからもだ。




月曜日の定時上がりの後、一日ぶりに訪れた冬野さんのお店の前と中に『スタッフ募集』の張り紙を見つけて目を丸くしつつ、そういえばせっかく入ったスタッフさんが逃げた、もといやめたんだったと思いなおして納得した。



せめて、マキさんが帰る前にスタッフさんが決まって、そんでもって、次のスタッフさんがマキさんとうまくやれる事を祈るばかりだった。

彼女は、男女問わず狙った獲物は、息の根止めんばかりにやっつけてしまう(精神的に)が幾分男性の方が当たりが優しいので、可愛いかったり、イケメンだったりを雇えば意外とうまくいくのでは?と思ったが、開店前に取った電話でスタッフ募集の問い合わせをしてきた声の主は、大学生風の女の子だった。



「今、表の張り紙を見て、ぜひ応募したいと思ったのですが、まだ募集はされていますか?」



今表の張り紙を見たと言うことは、彼女は今表の張り紙の見える位置にいるのだろうか? 怪談メリーさんみたいだな。『私、メリーさん。今あなたの背後にいるの』キャーなんてね。



そんなくだらないノリ突っ込みを心の中で繰り広げながら、冬野さんに電話を引き継ぎ開店準備にいそしんでいると、今から新人の面接をするからと私にカウンターを任せて冬野さんは、面接の準備を始めた。



開店時間と同時に入ってきたのは、土曜の夜に私が接客した一人で来店して私のおすすめを気に入ってくれた女のお客さんだった。



「よろしくお願いします」



元気の良いあいさつで、はきはきしていて、私はすごく好感が持てたのだが、彼女がマキさんとは破滅的にうまくいかない気がしてならなかった。

もういっそ、マキさんにお店に来て貰うのやめたら良いのに。

そう思いさえしたが、人には好き好きがあって、マキさんが良い人もいれば、そうじゃない人もいるのだから、私の一存って決してお店がうまく行く訳じゃないもんな。なんて他人事の様に考え、実際他人事じゃないかとまたノリ突っ込みしてしまった。
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