愛で壊れる世界なら、


 ギルウェルの笑みが、なぜか照れくさそうに変化する。その表情が可愛くて鼓動が跳ね、なのにどうしてだろう、腹の底にそわりと落ち着かない感覚を覚えた。
 あの日ギルウェルが懸命に何かを探して茂みを掻き分けていた先で、二人は出会った。その瞬間を思い出してでもいるのだろうか、彼はどこか遠くを見つめる。
 大樹にもたれかかり空を見上げるギルウェルの瞳は、光を受けて煌めく。空の色だ。とても美しく、エルザの心を惹き付ける。

「あの時は石を探してたんだ。そんなに大きくないし、価値らしい価値もないとは思うんだけど、前に綺麗なのを見かけたなって思い出して」

 彼がそうも言うものなのなら、見てみたい気がした。きっと自分も綺麗だと感じて気に入るに違いないと、エルザには思えた。

「その石は見つかったの? 綺麗なものが好きなの?」
「なんとか見つけたよ。綺麗なものは、だって嫌いな人なんていないよね」
「今は持ってないの? あたしも見てみたいわ」
「……んー、エルザは友達だから見せてあげたいけど、今ここにはなくて」
 
 友達だと明言されたことに気持ちが浮き立つ。


「また今度、ね」


 ギルウェルにしてみれば、もしかするとその場しのぎの言葉だったのかもしれない。それでも、エルザにとってのそれは約束だった。
 これまでは互いにふらりといつもの場所に訪れ、再会する偶然を、気にしないふりをしながら待っていた。もう二度と会えないかもしれない不安を抱えながら。


 また今度。それは次を期待させる言葉。


 嬉しさに笑みをこぼすエルザは気付かない。手元になく見せられないと言うギルウェルの懐に、本当は大切にそれが仕舞われていることに。

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