不器用同士
「…助けてくれてありがとう」
相楽くんが助けてくれなかったら、おじさんに無理やり連れ去られてた。
さっきのことを思い出すだけで鳥肌が止まらない。
手首は強く握られていたせいで、少し赤くなっていた。
気持ち悪い。
「大丈夫?」
心配そうな顔をして顔を覗き込んできた。
なにが?とは聞かずに大丈夫だと返した。
「じゃあ、本当にありがとう」
そう言って、相楽くんに背を向けて歩き出す。
目の前にラブホがある以上、ここにいたくないし。
誰かに見られて、相楽くんと噂が立つのも避けたい。
「さっき、俺の方がいいって言ったよね」
背後から相楽くんの声がした。
「なんのこと?」
無視できずに振り返るとニヤリと笑う相楽くんと目が合う。