不器用同士
もう諦めてるのかもしれない。
こういう目ばっかり合うのは仕方ないんじゃないか。
なんて、考えるけど体は未だ震えたままだし怖くて大声が出せない。
助けてすら言えない。
助けてくれないだろうと、初めから諦めてしまってる。
「早く入ろうか」
ニヤニヤしたままのおじさんの背後にはラブホテル。
「……」
「やっと大人しくなったな。やっぱり金が欲しくなったか?」
うるさい、そんなわけないでしょ。
勇気を振り絞って、もう一度手を振り払おうとした時。
「ねぇ、何してんの?」
私の後ろから声が聞こえた。
「え?」
間抜けな声が口から出た。
「えーと、たしか…華宮光莉ちゃんだったよね?」
首を傾げて聞いてきた人は。
「相楽翔琉…」
「ん?俺のこと知ってたの?」
相楽 翔琉(さがら かける)
ただのクラスメイトだけど、有名だから名前は覚えてた。