明日、雪うさぎが泣いたら
・・・
『……さゆ……さゆっ……!! 』
(……あ……)
恭一郎様にああ言われたばかりで、しかも、こちらの夢を見てしまうとは。
『……すごい熱だ。早く治療しないと……』
まだ幼く、私よりは大きいけれど、今の私からすると子供らしい柔らかさを残した手。
額に触れられ、ひんやりとして気持ちいい。
この後、恭一郎様に助けられた時と同じく、小さな私は熱があって、結果的に今の私もぼんやりしている。
『でも、ここじゃ……』
上手く頭が働かなくて、相変わらず男の子が憎々しげに睨んだ風景を見ることができないのだ。
(大丈夫、心配しないで。この後ね、兄様……恭一郎様が助けに来てくれるから)
この先の展開を知っている私は、やはりそう伝えようとするけれど、目も口もちっとも開いてはくれなかった。
『……ごめん。さゆ、ごめん……』
謝罪してもらうのを逆に申し訳なく思いながら、必死に他の手がかりを得ようとする。
「ここ」は互いの時代の狭間だろうか。
それとも、彼の住む時代を指しているのだらうか。
そう考えると、やはり私は恐らく未来から来たのではないかと思えた。
「ここでは治療できない」
それはつまり、裏を返せばもともと私がいた時代ならば、十分な医療を受けられた――そういう意味ではないかと。
『でも、さゆのことだけは絶対に助ける。たとえ、もう二度と会うことができなくなったとしても、絶対に。……大好きだ、さゆ』
放っておくこともできるのに。
わざわざ危険を犯して、何より嬉しい言葉を続けてくれた。
彼が再会を望まない理由は、ここにあるのだろうか――なんて、都合の良すぎる解釈だ。
でも、もし……万が一にも、このことを悔いているのだとしたら。
(私の為に、無理をさせてごめんなさい。でも、あなたには感謝しかないから。おかげで、今日の私もこうして元気でいられるの)
だからもう、気にしないで。
泣かないで。
――私も、大好きだったよ。