天魔の華は夜に咲く
センジュはフォルノスから離れた。

ソファーから離れ窓まで下がった。近くにあったレースのカーテンを握りしめる。


「何してる」

「・・・」


_わかってた。解ってたのに。苦しむだけだって解ってたのに。

なんで、こんなに心がぐちゃぐちゃなのに。

この人の事が好きだなんて思ったんだろう。

絶対、幸せになんてなれないのに。



「帰りたい」

「城にか?」

「自分の家に」

「お前の家はあの城だ」

「違う・・私は・・人間だもん・・人間として本当は暮らしたい」

「駄々をこねるな」


必死に心を殺した。

開いていたドアにしっかりと鍵をかけた様に心を閉ざした。


「誰も信じない・・」

「幼い子供か、聞いて呆れる」

「フォルノスがそう言った」

「俺が言いたいのは・・!」


センジュは振り向き、フォルノスを睨んだ。

泣きながらも憎しみを込めて睨んだ。


「パパの望みは・・私が大四魔将の誰かと一緒になって暮らす事でしょ」

「・・ああ」


乾いた笑いがこみ上げてきた。心を失った様に。


_どうせ私の望みは叶わない。私の周りに大きな壁が沢山並んでるみたい。


「もう、どうでもいいや・・」

「・・・」


明らかに目が虚ろだった。

希望を失った様な瞳だった。


「お前・・」


_誰でもいい・・。だって目の前の人は私を必要としてない。欲しいと思った瞬間に消えた。


センジュは部屋のドアを開けた。


「城に戻る」

「・・・わかった」
< 208 / 289 >

この作品をシェア

pagetop