天魔の華は夜に咲く
ソファーの上で疲れ果てたセンジュを膝に寝かせ、フォルノスは見つめた。


_こいつは俺を無理やりにこじ開けようとしてくる。俺を俺でなくす。今後、俺の足枷になるほどに危険だ。一度でも欲しいと思ったら、俺は動けなくなるだろうな。


「フォルノス・・」


「気を失う程激しくはしていないぞ」


「ぅ、馬鹿・・」


不貞腐れながらも、センジュはフォルノスの手を握った。

「フォルノスにとって本当に迷惑?私って・・」


「危険な事に変わりない」


「そっか・・」


フォルノスはセンジュの髪を指で弄んだ。


「お前は幸せにならなければならない。その使命があるかぎり、俺はお前の望みを叶える事は出来ない。だから・・諦めろ」

「どうしてそう思うの?」

「俺だけはやめておけ。不幸になる」

「そんなのわからないよ。今後の事なんて予想出来ない」

「わかる。自分の事だからな」

「さっきは、自分が解らないって言ってた癖に」

「お前に引きずられたんだ」

「酷いよ。人のせいにして」

「お前だってわからないって言ってただろう」

「う、うん・・そうだけどさ」


センジュは膝に寝たままフォルノスの腕を抱きしめた。

「私、強くなるから・・フォルノスと一緒にいたい」


「・・・」


「それでも、駄目?」


「強くなるのは勝手だがな。伴侶はやめておけ。後悔する。それに俺はお前に縛られる気はない」

「し、縛らないよ!別にそんなつもりじゃ」

「まあ、身体の関係くらいなら許してやる」

「ひどっ!ゲスい言葉言ったよ今!」

「うるさい。自惚れるな。お前の求めるものは俺にはない」


流石にその言葉にはしゅんとした。


「ったく、そーゆう顔をすれば良いと思ってるな」

「ち、違う!!でも・・ぅ・・」


泣きそうになった瞬間フォルノスに抱きしめられた。

「お前の為に、言ってるんだ」

「私の・・為」

「そうだ。わかったか」


フォルノスの指先に力が入った。その指は熱かった。


「わかった。・・だけど、フォルノスの事好きだよ」


「・・・」


「意地悪だし、放つ言葉が本当に酷くて傷つくけど。だけど、フォルノスが好きだよ」

「お前・・・変態か?」


「はあ!?!違うんですけど!!!」


「いや、今のは誰がどう聞いてもそう受け取るだろう」


「違うってば!!フォルノスが私の事・・嫌いでも・・」


その言葉を発すると胸がギュッと痛くなる。


「私は勝手にフォルノスの事、好きだからね!」


「ク・・ククク」


「え?何?」


「鈍いな、出会った時から」


「へ?何が!?」


フォルノスはセンジュを起こすと、笑いを隠す様に目を背けた。


「別に、嫌いじゃない」

「へ・・・だって」

「こんなに俺を可笑しくさせるのは魔界でもお前だけだ」


目の前でフォルノスが笑っている。

それに感動してセンジュの目から大粒の涙が溢れ出た。


「馬鹿、馬鹿馬鹿意地悪!!嫌い!!」


「ああ、俺もお前が嫌いだよ」


それはもはや合言葉の様だった。

フォルノスが背中をポンと撫でた瞬間、センジュはフォルノスを押し倒した。


「何する」

「許さないから。今日だけは私を好きになって」


そう言ってセンジュはフォルノスの唇を奪った。

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