地味で根暗で電信柱な私だけど、ちゃんと守ってくれますか?
 少しして落ち着いてから事情を説明すると佐藤さんが私の手を引いた。

「ちょっと寄り道していいですか」
「う、うん。どこに行くの?」

 それはですね、と元の口調に戻っていた彼は肝心の答えを口にしないまま駅に隣接するデパートのほうへと足を向ける。その表情には何かの決意があった。

 私はさっきの自分が急に恥ずかしくなってきて、それを隠すためにちょっとだけお姉さんぶってみせたくなる。

 強引に彼と腕を組んで身体を密着させた。上から見下ろすようにして彼を見つめる。

「何か欲しいものがあるの? 私が買ってあげるわよ」
「いえ、それじゃ意味ありませんし」

 彼が耳まで赤くなった。

「俺が買わないと駄目なんです」
「ん?」

 何を買おうとしているんだろう。

 私は彼の耳元に唇を寄せ、今度は艶やかに誘うようにたずねた。

「ねぇ、何を買うの?」
「そ、それはですね」

 彼の心音が数段跳ね上がるのが私にも伝わってくる。とくとく、とくとくとリズムを奏でる鼓動は熱を帯びながら私のそれと重なっていった。

「プロポーズは後でちゃんとしますから、今は指輪だけで我慢してください。とりあえずさっきみたいな奴が現れないようにしないと」
「えっ?」

 その言葉の意味するものを察して、今度は私のほうが赤くなった。
 
 
**本作はこれで終了です。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
 
 
 
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