翔んでアルミナリア
さすがの慧眼だ。
あなたもこの世界も、実はこの少年が創り出したものです———なんてことはもちろん口には出さないけど。

「年齢はやや重ねておりますが、今からでも修行を積めば優れたる導師になることでしょう。ここにおります我が弟子、セレマイヤの元で修行するのがよいと存じます」

我が師、と慌てたように割って入ったのは当のセレマイヤだ。
「私はまだ未熟にて弟子を持てる身では…」

セレマイヤよ、と諭すようにエストライヘル師が告げる。
「そろそろそなたも己を信じてよい頃だ。それに、ひとを教え導くことは、己の練達の道でもある」

「はっ!」
恐縮しきりといった様子ながらセレマイヤが(うべな)う。

かくして蓮くんの身の振りは定まってしまった。
導師の弟子か…闖入者として裁かれていた身にしては、上々だろう。

「して、この少女、ミカコといったか、のほうだが———」
リュシウス帝が、気のなさそうな視線をよこす。
家の前に捨てられていた仔犬をどうしたものか、と思案するような表情だ。

固唾を飲んで、皇帝の言葉を待つ時間が、永遠のように感じられた。
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