翔んでアルミナリア
それはともかく———箱から糸を取り出しながら、さりげなく隣のパンバに話を切り出す。

「あのね、噂で聞いたんだけど、二ヶ月くらい前に後宮でなにか事件があったって、本当なの?」

さっとこわばったパンバの表情が答えだった。
「…ミカコ、その噂を誰から聞いたの?」

「わたしと一緒に異界から迷い込んだ男の子が、導者の学び舎で聞いたって」
正直に答える。

そう、とパンバは視線を手元に落とす。
「人の口に戸は立てられないものね」と自分に言い聞かせるように口にする。
乾いたくちびるを舌で舐めて、パンバは押し殺した声でことのあらましを語ってくれた。

それは端的にいえば、エレオノア姫の誘拐未遂事件だった。それも主犯はなんと、皇帝の異母弟。
読みはどちらも『こうてい』なのでややこしいけど、皇弟(こうてい)が皇帝の寵姫を、白昼堂々(かどわ)かしようとしたのである。

皇弟リライアム、通称リランは現在十七歳。
リュシウス帝とは母の違う兄弟で、リンボバルト領の領主の地位にある。
< 75 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop