バイト会長の奮闘日記
「本当にごめんなさい!」
目の前には、深々と頭を下げるママ。
ルミナスのママの部屋で、私はさっきからママに何度も謝られていた。
「あの、そんなに謝らないでください。もう十分ですから」
……十分なのはママからの謝罪だけで、本人からの謝罪は一切ないけど。
ママから視線を横にずらすと、ムスッとした表情でソファに座る〝彼〟
その尊大な態度を見る限り、反省の色は全く見られない。
「カズサ! あなたも謝りなさい!」
ママの言葉にも無反応。
「大丈夫です、ママ。心のこもっていない謝罪はいらないので」
……それよりも、早く帰りたい。
「この子にはよく言って聞かせるから……本当にごめんなさい。これ、今日のお礼とおわびよ。心ばかりだけれど、受け取って」
手に茶封筒を握らされる。
お金をもらうつもりは全くなかったけれど、正直ありがたいので、素直に受け取った。
「もう4時……。遅くまで引き止めてごめんなさい」
家まで送らせて、というママの申し出をお断りして、店の外に出る。
まだまだ明るい夜の街を歩く。
1人になると、嫌でも思い出してしまうさっきの出来事。
思い返すだけで、心臓がうるさい。
あんなに近い距離に異性が来たことがなかったから、ただただ困惑。
それに……
「ファーストキス、だったのに……」
「へぇ、そうだったんだ」