綺桜の舞う
「文明、止まってるみたいだね」
「ふふっ、そうだね。
私たちの拠点はこの時計台の中。
一応この向こう側の古いお家何軒かも私たちが使ってたりするんだけど、あんまりだね」


けが人がたくさん出た時くらいかな、と言いながら、重そうな扉を引く。


ギィッという音。


「あ、ここの石段踏まないでね。この前沙彩が、叩き割っちゃってグラグラだから」


……何したんだ。
俺の目の前で、普通に石を踏んで傾いてよろける陽向。
抱きとめたのは伊織。
ぽわぽわする陽向と手を繋ぎながら歩き始める。


「ここ、ほんと危ないから気を付けて歩いてね」


叶奏はそう言いながらまっすぐ前に進む。
建物の裏側も石の目に沿って苔が生えている。


少し歩いて開けた先は、石の螺旋階段が登る、隙間からの光が差した場所。
外の温度よりは幾分か低い。


「この上?」
「そんなそんな。入りきらないよ?」
「じゃあ……」
「下です」
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