綺桜の舞う
叶奏は時計回りに回る階段を反時計回りに回り込んで、階段の下に掘り下げられた穴に進んでいく。
すぐに目の前の壁がゆく手を阻む。


「えーっとね……何だったかな」


左側の壁をペタペタ触って、1箇所、ガクンっと石が下がる。


「あ、あった。あとは……」


1番奥の小さな石を踏みつけると、またもやガクンっと下がる。


まさかのカラクリ。
静かに、目の前の石造りの壁が下がっていく。


「厳重過ぎない?」
「いや〜、何代も前の副総長さんがこの類のものが好きだったらしくてね〜。
気を付けてね。この先、部屋に抜けるまでに壁に触っちゃうと、苔が服にこびりつくから」


終始ニコニコ、叶奏は前に歩き始める。


「あっ、私のアイス!」
「知るか。そこに置いとくのが悪いんじゃん」
「今から食べようと思って置いたんでしょうがっ」


ざわざわと、だんだんクリアになっていく声。
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