綺桜の舞う
何も答えない鬼王の面子。
どうやら何を聞かれても答えるな、とすっぱく言われているらしい。


「……伊織くん、もういいよ、帰ろ?」
「……そうだね、族も割れたし」


最低限の情報は確保できた。
叶奏ちゃんは全員の耳元でそれぞれ何かを呟いた後俺の手を握って帰ろ?と微笑んだ。
……お姫様のフリ、ってとこかな?


「伊織さん、こいつらどうしますか」
「あー……どうしようもないから帰していいよ?」
「わかりました」
「ん、じゃあ先帰るね、気をつけて」
「ありがとうございます」


深々と頭を下げてから動き始める夜桜の子たちは思っていた以上に上下関係がしっかりしているようだ。


「ではでは、帰りましょうか、お姫様?」
「うん。まだ湊くんが起きてないといいけど……」


叶奏ちゃんはそう言いながら俺の後ろに跨ってギュッと抱きついてくる。
……ほんとに、見た目よらず成長するところはしてるな、と思う。
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