綺桜の舞う
好きな人から愛をもらえるってこれほどまでない幸せだって、思ってた。
両親が死んだ私に、一番最初に居場所をくれた陽向に、ただ、依存していたかった。
強くなることを放棄して、陽向の優しさに甘えていたかった。


……弱い私を、愛して欲しかった、だけだった。


「陽向がいないと、苦しい……」


行き場を与えられなかった感情が爆発する。
誰にも見せれなかった弱さを、誰に見せればいいかわからないまま2年半。
熟成して、膨張して、耐えられなくなった感情として涙と一緒にこぼれ落ちる。


「次は絶対消えない。約束する。
沙彩ちゃんの隣、もう手放さないって決めた」


陽向は私の涙を親指で優しく拭う。


「泣いた顔は、変わんないね。ずっとブサイク」
「うるさい……」


私は陽向の胸に飛び込む。


「捨てないで。いなく、ならないで。
嫌いにもなっちゃダメ。私の隣で、私のことだけ考えてて」
「うん。そのつもり」
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