綺桜の舞う
もう、陽向の隣に戻る資格は、私にはない。
こんなこと言って、……何してんだ、私。


「沙彩ちゃん……」
「……っ、ごめん……」
「言いたいこと、わかるよ。沙彩ちゃんに何言われても、ちゃんと受け止める。
僕が最低だったのは事実だし。


だけど、沙彩ちゃんの隣を捨てたのは、僕が足りない人間だって思ったからで、沙彩ちゃんのこと守ってあげられないのが、怖くて、自分から逃げた。


……それは、本当にごめん。
好きだったから、怖かった」


なにそれ、何それ……。
優しいとか、やめてよ。
私のこと甘やかすの、昔からうますぎなんだよ。
なんで私のこと責めてくれないの?
突き放してよ……。
辛い、だけだよ。
今更真実を知ったところで、過ぎた二年はもう戻ってこない。


「私は、陽向に守って欲しかったわけじゃない……。
違う、私は」


精一杯の愛をくれる陽向しか、私を受け入れてくれる人間がいなかった。
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