綺桜の舞う
24.ここだけの話……?
「もう身体いいの?」
「どうだろ。それなりに痛いけど、体が軋むことはもうないかな」


沙彩の言葉にほら、と身体を動かして見せてくれる叶奏。
それでも部屋着のキャミソールとショートパンツから伸びる手足には2日前の傷がたくさん残っている。
別荘で夕と待っていた蛍とそわそわしながら待っていた蛍としては、向こうで何があったか、全然わからないけど。


……覚醒したって、言ってたから。


一度だけ、蛍はその覚醒を見たことがある。
叶奏が記憶を失う前の話。


記憶を忘れても、身体は喧嘩の仕方を知っているように、叶奏の身体は、あの感情を忘れていない。


怖気が立つような、心が折れそうになるような、そんな裏切りの感情を……叶奏の身体は覚えてる。


……きっと、叶奏の記憶はもう少しで戻る。
それが、蛍には、わかる。


「蛍、今日は朔と喧嘩した?」
「してない。スマホなかったし……たくさんかまってくれた」
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