綺桜の舞う
30.警告と順応
「ユッキーさ」


夜も更けて、2人がベッドで眠りこけっている今、意識があるのは飲んだくれた俺と伊織の2人だけ。
酔いつぶれてこそいないものの結構回ってる。


「ん〜?」
「俺見ちゃったんだよね〜」


にっこりと笑う伊織。色気しかない。
バレッタで止められた赤い前髪がちらほら溢れて、それすらももう……女の子だったらキュンときそうな。
女の子じゃないからキュンとは来ないんだけど。


「何を?」
「んー……ホテル出てくとこ?」
「ほ〜……」
「だめだよ、相手隠してるんなら一緒に出てきちゃ。あの子、敵でしょ」


頭の白い子、と伊織は妖艶な微笑みで、俺のことをじっと見つめる。
無駄な色気を伊織の手にある酒が助長して、行動を起こしにくい。


「……まぁ」
「俺は誰にも言わないけどさ、バレてみんなに怒られても知らないよ?ユッキーのことだから、情報漏らすなんて面白いことしてないだろうけどさ」
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