綺桜の舞う
夜桜はその言葉を聞き、ほとんどが真っ直ぐ倉庫の中心部に向かった。
叶奏の指示した時は違う、迷いなき真っ直ぐの足取りに加えられた、信仰とも取れうる真っ直ぐな意志が敵に突き刺さる。


一方俺たち綺龍は、そうもいかない。
傷だらけになって今にも膝をつきそうになるくらいの満身創痍に勇者たちの背中が眩しい。
ニヤリと、伊織が笑う。


「あぁ……これが世界一なら、───死ぬほど納得した」


笑いながら上を向いて立ち上がり、倉庫外周をさっきの倍の勢いで殲滅していく。


それに感化されたように立ち上がる綺龍。
やけに軽そうな身のこなしは、普段では見受けられないほど。


ものの数分、俺の目の前には階段への道が開いた。


「湊、今だから」


みーにゃん、と俺のことを呼ぶ可愛い陽向はここにはいない。
総長としての役割を担う、空井陽向の姿がそこにあるだけだ。


俺は陽向の言葉に頷いて階段を駆け上る。
叶奏が倒れた場所は階段からは1番遠い場所。
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