綺桜の舞う
39.ぐらぐらして、
「ただいま」
「おかえり〜」


綺龍の倉庫から帰った俺を、俺の家で向かい入れてくれるのは退院してまもない叶奏。
年も明けて一月中旬。


結局、病院で叶奏が他の人とコミュニケーションを取ることはなく、状況を話してくれないものだから入院も長引かざるを得ず、1ヶ月半の延長の末、記憶は取り戻した“だろう”というあの高そうな病院でも曖昧な診断結果とともに叶奏は帰ってきた。


流石にすぐには体力は戻らず、しばらくは家でゴロゴロする日々だと思う。
病院にいた時とは違って日常生活に支障ないくらいには話してくれるようになった。
異変はないかと言われたら、素直に頷けるような叶奏の態度ではないけど、とりあえず、いつもの笑顔が見れるのは安心材料だった。


「今日は何してた?」
「録り溜めてくれてあったドラマ一気見してた」
「学校の課題は?」
「……触れないでおこ?」
「明日はちゃんとしろよ?」
「うーん……頑張る」
< 359 / 485 >

この作品をシェア

pagetop