綺桜の舞う
好きとか嫌いとか、そんな感情でこの世界は回っていない。
感情論だけで生きていると痛い目に遭うのだ。
あの日家から飛び出したこととか、刃牙の倉庫の近くに迷い込んでしまったこととか。


あの日、ユキにぶつかってしまったこととか。
その後まんまと、絆されてしまったこととか。


全部全部、感情が故の過ちだった。


裏切られるのが怖い、ただの弱虫にこれ以上、感情なんて曖昧でバカらしいものを持たせないでほしい。


「琥珀、シよっか」
「え……今から?」
「うん。そう。今、ここで」


授業、後30分ぐらいしかないからもうすぐだけど、なんて飄々というユキ。


「本気で言ってる?学校だよ?」
「……どっちが勝っても抗争が終わったら俺たちの関係は終わりでしょ?今後会うことなんてなくなる。
……今日だけ、俺のわがまま付き合って。



絶対、守るから」


……ズルい。
全部がズルい。
真剣な目も、らしくもなく震えた手も、最後、だなんて言葉も。
全部全部頭では理解していたはずなのにいざ言葉にされると胸がキュッとしてしまう。


「最後まで無理ばっか言って、ごめんね」


好きだよ。


耳元で囁かれたその言葉は、ボクの目から涙を誘った。
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